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Nature&Humans Total Care

人と自然のトータルケア

 
 
人と自然の危機
 

  人間の歴史は、ブレーキのないまま自己破壊と自然破壊に傾いた構造(システム)と文化の中で、ゴールが見えないまま強迫的に走り続けています。地球の自然環境も、人間の社会状況もいきづまり、危機的状況を迎えています。既存の科学やシステムは物質的豊かさを人類にもたらしましたが、同時に矛盾をはらみ、南北問題などをもたらしました。地球上の人間は限界にぶちあたり、袋小路の中でがんじがらめになり、身動きができなくなっています。
多くの人々の心は空洞化し慢性的無力感を抱き、主体性と活きる意味を失い、現状を傍観するばかりです。このままでは人も自然も未来を失ってしまいかねない。こうした現状を打開し、次世代に希望を手渡していくには、それぞれの専門分野にしっかり根付き、経験知を生かしてきたものたちが、専門領域を超え、人と自然に関する憂慮や解決策などを真摯に対話・協議し、実践現場での協働研究などを通じて共に来るべき新しいパラダイムを自ら拓くほかないでしょう。こうした協働の思索、試みが行き交い、結集するポジテブな拓かれた磁場(ポトス)が必要とされています。こうした必要に答える場としてNature&Humansを設けました。

 
来るべきパラダイムとしての「人と自然のトータルケア」

「人と自然のトータルケア」とは暫定的な定義であり、新しいパラダイムを希求し出航を促す提案であり、呼びかけです。まだ実現せず体系となっていない、来るべきパラダイムを「人と自然のトータルケア」と名づけ、人と自然の「いのち」の危機的状況に対して、諸科学・文化・芸術の成果を結集し、「実践現場での行動の指針としての叡知」を築こうとする試みです。

「人と自然のトータルケア」においては、人間を全人格としてトータルに捉え、トータルにケアする学問が求められています。また人間と自然の共生のみならず、人間と自然の相互関係を重視し、人間と自然が深く出会い、自然に生かされケアされている人間の存在に気づき、なおかつ自然を人間がケアしていく社会的責任を果たしていく具体的方策が求められています。人間が責任ある具体的な方策を見出さなければ、現在の自然破壊の速度は加速し、ついに人間は地球上で生きてゆくことができなくなってしまいかねない危機にあることを明晰に認識する必要があります。

 

人と自然のトータルケアが対象とする研究分野
「人と自然のトータルケア」が対象とする研究分野は、

構成学問分野として第一に「人の生命・ケア」に関する学問である生命・医科学、医療、看護、リハビリテーション、福祉、教育、など、 

第二に自然に関する学問である生物学、動物学、地学、農学・園芸学などの自然科学、エコロジー、環境学、庭園学・造園学 建築学 都市計画など 

第3に人間性・人間らしさに関する学問である哲学、心理学、倫理 文学、芸術 民族学・民俗学、神学、宗教、考古学

 第4に人間社会に関する学問である社会、歴史、経済、法、政治などです。こうした構成学問が、さまざまな研究領域を超えた学際的協力により、人の「いのち」と自然の「いのち」をトータルにケアしようとする実践総合科学・実践総合芸術の新しいパラダイム・視座を生み出そうとする学問です。
 

人と自然のトータルケアが目指す目標と方向性
「人と自然のトータルケア」の概念は暫定的なものであり、重層する目標や方向性を目指しています。

第一にWHO憲章が定義する「健康」を実現するためのトータルアプローチを目指しています。

「完全な肉体的(physical)、精神的(mental)、スピリチュアル(Spiritual)及び社会的(social)福祉のダイナミック(Dynamic)な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。最高水準の健康を享受することは、全ての人々の基本的権利のうちの一つである。」
WHO 憲章における「健康」の定義の改正案

"Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity."

 

第2に健康の社会的決定要因(健康つくりのためのオタワ憲章)を重視し、これらの要因をトータルに捉え、その要因の改善にトータルにアプローチすることをめざしています。

 

第3に東洋と西洋の英知の統合 

近代・現代科学の科学的アプローチによるエビデンスに基づいた研究を推進すると同時に、東洋医学・東洋哲学・古代からの伝承治療など、経験的に効果が確かめられてきた経験知を重視し、現存の研究スタイルとは異なる研究スタイルによる研究を模索し、西洋医学・科学と東洋医学・科学の統合をめざします。 

東洋と西洋、近代・現代科学と古代・先住民の英知をトータルに統合した英知を構築する ことをめざしています。

 

第4に国境を超えた協働が不可欠です。
「人と自然のトータルケア」に関する問題の前に国境や障壁はなく、国を超えた協力活動が不可欠です。医療・福祉・教育はそれぞれの国の政策や経済システムに即した固有のシステムによって運営されていますが、同時に地球上のユニバーサルな課題です。人と自然の危機的状況は、ひとつの国だけで解決できるものは少なく、国を超えた協力関係が必須です。地球全体をトータルに捉える視座や行動が、必要とされています。

 

第5に病気をみる医療から人間をみる医療へ
   人と自然のトータルケアは、自己治癒能力や、当事者本人の「生きるちから」や主体性と自己決定権を重視しています。

 

 第6に地域コミュニテイの健康とコミュニテイの自己治癒能力を重視します。
かつて村社会や長屋などには素朴な助け合いが存在し、赤ん坊はお産婆さんや近所の女たちの助け合いや立会いのもと生まれ、お年よりは小さな子供の面倒をみるという重要な役割を果たした後、亡くなり村に支えられて葬られました。

  かつての相互扶助やアジアなど開発途上国の人々の助け合いから、学ぶべきものは多いと考えます。サステナビリテイの観点からも、開発途上国の村などで行われている相互扶助は有意義でしょう。こうした村での助け合いは自然のサイクルや農の生活を核にしたものも多く、地域コミュニテイが再生するためには、自然や農園芸が重要な役割を果たすでしょう。

私たちは個の尊重と、地域コミュニテイの再生という、時には相矛盾する概念を同時に捉え、トータルケアにつなげようとしています。

 

第7にさまざまな人や社会の病理が、自然が失われることで生じているという視点を重視します。 

Richard Louv はNature Deficit Disorder という概念を提唱しました。さまざまな人の不調や病理や、社会病理が、人間が自然に触れる機会が失われた長期的な欠乏により、生じているという考え方です。人間が自然に触れ、自然の回復に直接関わることは、長期的に人間と人間社会が回復することにつながります。人間の回復と自然の回復に、相関関係があります。

第8に「自然と人のトータルケア」はさまざまな学問や実践のMELTING POT(溶鉱炉)です。​   相矛盾する概念や要素がぶつかり合い、せめぎあい作用しあう実験道場です。こうしたポトス(磁場)では、試行錯誤・生み出すための痛み・カオスを私たちは避けることができません。そうしたカオスや痛みを突き抜けて、新しいパラダイムは生まれます。私たちは今日的課題と、今後の人と自然の遠い未来までも見据えて、息の長い研究・実践を果敢にじっくり取り組もうとしています。

 

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